マトゥラー(Mathura)美術(1)

                                        インドの仏教美術概略年表

 マトゥラーは、ニューデリーの南南東 約140Kmに位置する。ガンダーラとほぼ同時期に仏像が初めて造られた所で、作品は

 近郊のシークリーに産出する黄白班のある赤砂岩が使われている。その為、特徴が歴然とし判明が容易にできる。作風は、

 ガンダーラと全く異なり純インド様式で、グプタ期に至るまでインド美術を主導した。また、ヒンドゥー教のクリシュナ信仰の中

 心地としても、よく知られている。

 マトゥラー美術(1) 仏陀(Buddha)と菩薩(Bodhisattva)像

仏坐像(2世紀前半、カトラー出土、砂岩、高さ 71Cm、マトゥラー博物館)

マトゥラー仏最初期の代表作。仏陀は、獅子座の上で結跏趺坐する。脇侍は、払子(ほっす)を手に立ち、上方では二体の飛天が散華する。

右手は施無畏印、左手は膝に置き、結跏趺坐する。仏陀の像容であるが、台座の刻銘に「菩薩」と刻まれている。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

仏頭 (2世紀、チャウパーラー出土、砂岩、高さ 55Cm、マトゥラー博物館) 仏立像(1世紀、カンカーリー・ティーラー出土、砂岩、マトゥーラー博物館)

左上の仏頭は、カトラー出土の仏坐像と同じく頭を剃髪(ていはつ)にし、頂上にカパルダと呼ばれる巻貝型の肉髻をつけている。

仏坐像下部 (砂岩、マトゥラー博物館)

胴から上を欠損する。獅子座の上に結跏趺坐(けっかふざ)する。足裏には、法輪と三宝標を線刻する。

足裏の法輪と三宝標

仏立像(砂岩、マトゥラー博物館) 仏立像(砂岩、マトゥラー博物館)

塔門横木 裏面 帝釈窟説法 (2世紀前期、クシャトラパ時代後期、長さ 225Cm、マトゥラー博物館)

古様なもので、中央の仏は坐像として表出され、初期仏伝図における無仏像から仏像への過渡的様相を示している。石窟内に施無畏印の仏を中心に、

礼拝聴聞に来た帝釈天とその一行を横に細長くならべて描く。仏の像容は、初期マトゥラー仏の定型的像形式に近いが、肉髻や結跏の坐法など、まだ

形の整わない初期的な表現を示している。(高田 修著:「仏像の誕生」 岩波新書)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

菩薩坐像(2世紀、ガネーシュラー出土、砂岩、高さ 68Cm、マトゥラー博物館)

頭部と右手を欠損するが、右手の先端が残り禅定印を結んでいたことがわかる。

足裏に、法輪と三宝標を線刻する。装飾品をたくさん着けているいるのが目を惹く。

仏立像(砂岩、カルカッタ・インド博物館) 菩薩立像(マトゥラー博物館)

装飾品で飾られた菩薩 胸像(砂岩、マトゥラー博物館)

 マトゥラー(Mathura)美術(2) 王侯と守護神像             アジアの宗教美術と博物館!

マトゥラー博物館 室内展示 風景

(撮影、マトゥーラー博物館:2000年5月7日)