ガンダーラ(Gandhara)美術(5)

 現在のパキスタン北部、ペシャワール周辺域をさす古名 ガンダーラ(犍駄羅)に栄えた古代美術。ガンダーラ美術にはヘレニズム・ローマ系、

 イラン系遊牧民、インド系諸美術が様々に融合する。彫刻は石彫が主流で、黒青色片岩や緑泥片岩が多く使われている。

 仏像は、1世紀前半~中頃に成立したとする見解が有力で、マトゥーラと共に仏像の起源とされている。

 ガンダーラ美術(5) 菩薩(Bodhisattava)像(1)

  菩薩は、悟りを求める者、衆生を救うために修行を行う者のことで、仏陀とは異なり、豪華な装身具を身にまとった王族の姿で表される。

  髪を束ねて、手に水瓶を持つのは弥勒菩薩、頭部にターバン冠飾をつけるのは釈迦菩薩、あるいは観音菩薩。観音菩薩は、手に蓮華

  や花綱を持ち、ターバン冠飾に化仏(けぶつ)を表す例がある。

釈迦菩薩像(樹下観耕) (2-3世紀、サハリ・バハロール出土、片岩、高さ 69Cm、ペシャワール博物館)

ジャンプ樹の下、草上に結跏趺坐するシッダールタ太子(釈迦菩薩)で、頭にターバンを巻き、首飾り、胸飾り、腕飾りをつけ、両手は禅定印を結ぶ。

台座の中央に香炉、向かって左に二人の供養者と大きな人物が合掌する。右に二頭の瘤牛を使って農夫が田を耕す。全体の図像から仏伝における

樹下観耕(じゅかかんこう)の場面であることが分かる。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

釈迦菩薩像(樹下観耕)の台座部 (2-3世紀、サハリ・バハロール出土)

樹下観耕の場面は、農夫が田を耕すと土中に虫を見つけた小鳥がそれをついばみ、その小鳥は大きな猛禽に捕えられる。その光景を目にした釈迦は、

弱肉強食のあさましい姿に人間を含めた生類の逃れようのない悲惨無常を観察したと伝えられる。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

弥勒菩薩立像(2-3世紀、タフティ・バーイ出土、片岩、高さ 208Cm、ラホール博物館)

力強い表現がされているガンダーラ仏の傑作で、頭頂に宝髻(ほうけい:髪束)をつくる。左手が中ほどで折れ、修復がまずく不自然な形になっている

弥勒菩薩立像頭部(2-3世紀)

弥勒菩薩立像(2-3世紀、片岩、ペシャワール博物館) 菩薩立像(2-3世紀、ガンダーラ出土、片岩、像高125Cm、ペシャワール博)

菩薩立像頭部(上、右写真拡大、2-3世紀、ペシャワール博物館)

右手を欠損した菩薩像で、左手は腰にあて、頭はターバンを巻き、ライオンの顔がついた胸飾りをつけている

弥勒菩薩立像(2-3世紀、サハリ・バハロール出土、片岩、高さ 154Cm) 弥勒菩薩立像(2世紀中期、片岩、ラホール博物館)

向かって右上の弥勒菩薩は、左手に水瓶を持ち、頭髪は左右に振分け二つの房を結んでいる(早期ガンダーラ仏)

弥勒菩薩立像頭部(上、左写真拡大 、2-3世紀、ペシャワール博物館)

両手を欠損する。頭髪を形に結う束髪とし、左手欠損部の形から水瓶を持っていたものと思われる

菩薩立像(片岩、ペシャワール博物館) 菩薩立像(片岩、ペシャワール博物館)

菩薩立像部分(片岩、マドラス州立博物館)

弥勒菩薩立像(ペシャワール博物館) 弥勒菩薩坐像(ラホール博物館)

 ガンダーラ美術(6) 菩薩(Bodhisattava)像(2)            アジアの宗教美術と博物館!

菩薩像(ペシャワール博物館) 菩薩像(ペシャワール博物館)

(撮影:1994年5月3日、5月5日)