インドのビハール、ベンガル(インド東部とバングラディシュ)の両地方で栄えた美術で、インド仏教美術の末期を代表する。この時代
にブッダガヤー、サールナート、ナーランダーなどの伽藍は増改築され、オーダンタプリー、ヴィクラマシラー、バハ-ルプルなどの伽藍
が新しく造営され、同時にネパール、チベット、東南アジアの国々に大きな影響を及ぼした。
しかし、12世紀の中頃に、デカン地方から進出してきたセーナ朝にとって代わられた。セーナ朝は、ヒンドゥー教を信奉したため、仏教
は衰え、しかもセーナ朝は1世紀も満たずにイスラム勢力の侵入により滅亡し、仏教は壊滅した。(1200年頃)
パーラ美術の特色は多種多様な石造尊像彫刻にあり、多くは光沢のある黒い玄武岩を用いている。彫像はグプタ様式(特にサールナ
ート派)を継承しつつも造像規定(儀軌)の厳守により形式化し、芸術的な精神性が見られなくなる。
伝統的な釈迦像や仏伝図像も少なくないが、ヒンドゥー教の影響を受けた多面多臂像や憤怒像を含む多彩な密教像が数多く造られて
いる。
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触地印仏坐像(パーラ時代、ニューデリー国立博物館) | 触地印仏坐像(パーラ時代、ニューデリー国立博物館) |
菩提樹の下、獅子座上で、結跏趺坐し蝕地印を結ぶ仏陀(降魔成道)
宝冠仏坐像(パーラ時代、ニューデリー国立博物館)
二脇侍を伴い、結跏趺坐し、転法輪印(説法印)を結ぶ仏陀
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観音菩薩立像(パーラ時代、ニューデリー国立博物館) | 観音菩薩立像(パーラ時代、ニューデリー国立博物館) |
左上の観音菩薩は、頭上に阿弥陀の化仏をいただく。手は四臂で右手の第一手は与願印、第二手は数珠を持つ、左手の第一手は宝瓶、第二手は満開の
蓮華の茎を執る。脇侍の向かって左はターラー(多羅)、左は四臂で第一手を合掌するブリクティー(毘俱胝)と思われる。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
カディラヴァニー・ターラー(ニューデリー国立博物館) | ターラー坐像(ニューデリー国立博物館) |
左右に女尊の脇侍をともなう | 右手は与願印、左手に蓮華の茎を持つ |
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ダルマダートゥ・ヴァーギーシュバラ(法界語自在)?(ニューデリー国立博物館) | ターラー(ニューデリー国立博物館) | |
四面八臂の密教仏で、文殊の異称一つ | ||
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マハーマーユーリー(孔雀明王)(ニューデリー国立博物館) | 与願印の仏三尊立像(ニューデリー国立博物館) |
胴を右に傾けた三曲法の姿勢で立っている孔雀明王は、蛇の天敵である孔雀を神格化した女尊。日本では、平安期を中心に信仰された
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ヴィシュヌ像(パーラ朝 12世紀、東部インド) | パールヴァティー(10世紀・ベンガル地方出土) | |
(プリンス・オブ・ウェールズ博物館蔵) | (ニューデリー国立博物館蔵) |